アキと私〜茜色の約束〜
ボールは低い弧を描き、ボードに当たってネットを揺らした。
「やった!」
「やるじゃん。次、俺な」
秋人はボールを拾うと、私が投げた所より二歩ほど離れたラインで構えた。
すぐに真剣な目付きに変わる。
そして、軽やかに放ったボールはボードにもポストにも触れることがないまま、ネットをスパッと揺らした。
「よし」と嬉しそうにガッツポーズをする秋人に、きゅんと胸が締め付けられる。
アキが息を引き取ってから、また暫く笑わなくなった秋人にも、やっと笑顔が戻った。
それが堪らなく嬉しい反面、アキの死から二年の月日が経ったことが少し切ない。
二本目もお互い決めて、ラスト三本目。
私のシュートはゴールポストに弾かれて外れた。
「悪いけど、残念だったな、なんて言わないからな。次、俺が決めれば俺の勝ちだ」
秋人は着ていたダウンジャケットを脱ぐと、シャツの袖を捲る。
露わになった腕の筋肉が、男を感じさせる。