アキと私〜茜色の約束〜
そして、それはボードにもポストにも当たることなく。
今までで一番気持ち良い快音を鳴らした。
トン、トントン…と地面にボールが落ちる。
動けなかった。
勝負に負けたくせに、嬉しさのあまり立ち尽くしてしまったのもそうだけど。
「茜…」
突然、秋人に後ろから抱き寄せられて、私の胸は震えた。
「秋…ひと…」
「好きだ」
ストレートな秋人らしい告白。
本当はすぐにでも自分の気持ちを伝えたいのに、言葉にならない。
その代わり、涙が次から次へと頬を伝い秋人の腕に落ちる。
「返事は?」
答えを催促する秋人の声に、緊張の色が見える。
ああ、私。
秋人がどうしようもなく好きだ。
この力強い腕、胸の広さ、温もり、息遣い、心臓の鼓動。
全てが愛おしい。
誰にも渡したくない。
秋人に伝えたいことが多すぎて、自分の気持ちが大き過ぎて、どう言葉にしたらいいかわからない。
ただ一つ言いたかったこと。
それは、
「秋人…待っててくれて、ありがとう」
そう言って、秋人の腕を解くと向かい合って、背中に腕を回した。