アキと私〜茜色の約束〜
『お父さんと暮らすのなら、この家になるわ。よく考えて』
俺は、突然の話に頭はすっかりパンク状態で、何を優先して選んだらいいのかもわからなかった。
目の前の二人は、完全に俺に託している。
俺の意見を尊重しようとしてくれている。
だけど、親をどっちか選べなんて…
そう簡単に答えを出せるわけない。
『俺、ちょっと出てくる』
力なくそう言うと、家を出て土手に向かう。
今、凄くあの夕日が見たい気分だった。
あそこに行けば、幾らかは気持ちが落ち着くだろう。
とにかく今は、一旦全てを無にしたい気分だった。
土手に着くと、芝生にごろんと寝転ぶ。
川は茜色に染まっていて、俺の心とは正反対に輝いている。
目を閉じると、色んな自然の音が聞こえて来る。
虫の声。
風の音。
川の音。
草同士が擦れる音。
そして、
『秋人ー‼︎』
愛しい人の声。