アキと私〜茜色の約束〜
『何?』
『ん。約束の指切りげんまん』
『は?嫌だし』
指切りげんまんって、小学生じゃあるまいし。
そんなの恥ずかしくて出来るかよ。
それに小指でも、茜に触れるなんて…
どう考えても無理。
俺は茜から顔を逸らす。
『駄目。秋人はすぐ我慢するから』
そう言うと、茜は無理矢理俺の手を取って、俺の小指に自分のを絡ませた。
『おいっ!やめ、』
『指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます!指切った!』
満足そうに手を離すと、白い歯を見せて笑う茜。
柄にもなく、トクン、と胸が鳴って。
俺はまたそっぽを向いて、赤くなる顔を隠した。
ホント、こいつには敵わない。
強引で、無鉄砲で、頑固で。
だけど、優しくて、一生懸命で。
茜の二ヒヒと白い歯を見せる無邪気な笑顔が、物心ついた頃から好きだった。
この笑顔を守りたいと。
その役目は俺だと、そう幼いながらも思ってた。