アキと私〜茜色の約束〜
アキはそんな俺に気付いてそうだけど。
茜は鈍感だから、全く気付いてないだろう。
『いいの。アキは甘いもの、そんな得意じゃないし』
『ああ…そうだったな』
アキは甘いものが苦手。
だけど、茜が作った菓子は何がなんでも食べる。
しかも、凄く嬉しそうに「美味い美味い」って言いながら。
『それに、秋人好きでしょ?』
『…は?』
『甘い物。食べる時、幸せそうな顔してるもん』
あ、ああ…甘いもの、ね。
一瞬、「好きでしょ?」って聞かれて、焦った。
『それに私、秋人と二人で話す時間もアキといる時間と同じぐらい好きだから』
茜はそう言って、茜空を見上げた。
そして、目を閉じて、風を身体に取り込むようにゆっくりと深呼吸をした。
俺は、茜から目を離せなくて。
抱き締めたい衝動を必死に抑えた。
やっぱり、俺は茜が好きだ。
渡したくない、誰にも。
それが例え、アキだとしても。