アキと私〜茜色の約束〜

結局、エースなのに得点が10点以下のまま前半が終わった。

こんなんでエース。
笑わせないで…

こんな適当なプレーして、“そこ”に立たないでよ。
立ちたくても立てない人がいるんだから。

こんな試合見たくない。

帰ろうと席を立つと、タイミングよくハーフタイム終了の合図が鳴った。
ベンチから選手がぞろぞろと出てくる。

不意に赤いユニフォームの背番号4を背負った秋人が振り返った。

重なる視線。
時が止まったように目が離せない。
秋人の目は何か言いたげで…

気が付くと、第3クォーター開始の笛が場内に鳴り響いていた。


「すみません。座って頂けます?」

「あ…ごめんなさい」


後ろの席の人に言われ、慌てて席に座り直した。

帰ろうと思ったけど、秋人のあの目が気になる。
秋人は私に何を伝えたかったんだろう。


「ねぇ、赤の4番。急に人が変わったみたいじゃない?」


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