アキと私〜茜色の約束〜
ーートントン。
ドアをノックして、「入るね」と声を掛けて部屋に入る。
「寝てる…か」
ベッドに横になるアキこと向井明希(むかい あき)が寝てるのを確認すると、荷物を置いてベッドサイドに置かれた椅子に腰を掛けた。
布団から出てるプロミスリングのついたアキの手を両手で包み込むように握る。
「今日ね、うちのバスケ部がインターハイ出場を決めたよ」
寝てるアキに話し掛けるが、当然返事はない。
「だけどね、秋人の馬鹿がエースのくせに前半全然駄目駄目でさ、エンジンかかったの後半だったんだから。そのせいで接戦になってさ」
決勝戦を見ながら、ずっと重ねてた。
アキならあの場面はああした、とか。
アキならアキならって、そこにいるはずがないアキの姿を探してた。
「アキがいればもっと楽に勝ててたよ…」
私の頭の中で繰り広げられていたのは、秋人のポジションにいるアキだった。