アキと私〜茜色の約束〜
病院を出ると、私はその足で土手に来ていた。
どこからか美味しそうなカレーの香りが漂っている。
あの日の丁度この時間、まさにこの場所でアキと別れた。
あれから二年と少し。
アキは眠ったまま。
事故から少しして、お母さんから事故の話を聞いた。
トラックの運転手の居眠り運転で起きた悲劇の事故。
目撃者の話によると、アキと秋人が何か言い合いをしていて、丁度青になった横断歩道を秋人が走って渡ろうとした時にトラックが突っ込んできたらしい。
秋人の名前を叫びながらアキは秋人の体を突き飛ばして、かわりにアキが轢かれてしまった、と。
“俺が殺した”
あの言葉の意味がようやくわかった。
信じて疑わなかった。
アキと最後に交わした“また明日”。
それは今も叶わぬまま…