アキと私〜茜色の約束〜
ーーソメイヨシノはすっかりと葉桜になってしまった。
高校三年の春。
新しい三階の教室の、窓側の一番後ろの特等席から満開の桜を見下ろすのが好きだった。
淡いピンク色の花びらがそよ風に舞い、甘い香りが鼻腔をくすぐる。
つまらない学校で唯一この窓からの景色を見るのが楽しみだったのに、あっという間に桜は散り、景色は春から夏に少しずつ変わろうとしていた。
「茜、何番だった?」
私の手元のメモに書かれた番号を勝手に見て黒板と照らし合わせるのは、同じ小中学校出身で親友の坂田弥生(さかた やよい)。
「あっ!秋人君の隣りだ」
“秋人”という名前に反射的にピクッと反応したのは、私、森下茜(もりした あかね)。