アキと私〜茜色の約束〜

車の側面に会社名が書いてある。
なんで不動産屋の車がここに?

そう思った矢先、向かいの家の玄関が開いて、その家のおばさんとスーツ姿の男性が出て来た。


「では、宜しくお願いします」


二人はそう挨拶を交わすと、男性は車に乗り、颯爽と車を発車させた。


「あら、茜ちゃん。今帰り?」


私に気付いたおばさんは、一瞬動揺を見せた。


「おばさん。今の人…不動産屋だよね?」


おばさんは目を逸らし、俯く。

高校生の私にだって不動産会社がどんなとこなのかぐらいわかる。


「もしかして…引っ越すの?」


図星だと言わんばかりにビクッと肩を揺らすおばさん。


「急に、どうして…?」


頭が混乱して、上手く声が出てこない。

おばさんは意を決したように、ふぅ、と息を吐くとポツリと話し始めた。


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