アキと私〜茜色の約束〜
夏なのに少し冷んやりする静かな廊下。
私と秋人の呼吸がやけに響く。
「俺、もう遠慮しないから」
そう言って、秋人はじゃあな、と背を向けて走って行った。
『俺がずっと茜を好きだったって言ったらどうする?』
秋人の言葉が耳に残って離れない。
私…本当にどうしちゃったんだろう。
あんなに秋人のこと嫌いで、許せなくて、顔も合わせたくなかったのに…
こんなにもドキドキしてる。
秋人にああやって言われて嫌じゃなかった。
わたし…私…
秋人のこと、好き…なの?
秋人の背中が廊下の曲がり角に消えても、私は暫くそこから動けなかった。
何故か涙が出そうになったんだ。