時間切れ
「おめでとうございます。元気な男の子ですよ。」
5月26日 09:50 3350g 男の子を授かりました。
名前は"太陽"と名付けました。
義母からの薦めです。
初孫ということもあり、義母の気合いの入りようには戸惑っています。
今日の午前中も、英会話スクールは早いうちから始めたほうがいいと大量のパンフレットを持ってきました。
産後はできれば休ませていただきたかったのですが、義母をあしらうわけにいかないので興味をもってるような口ぶりをしてしまいました。
正直、英会話スクールにいれるつもりはありません。
私自身、2歳から小学校2年生まで習いましたが、英会話は全くしゃべれません。
コンコン。
「失礼します。」
「は~い」
入ってきたのは、医師とスーツ姿の女性でした。
あー、この時間がきたのか。
「寿命時計ですか?」
スーツ姿の女性が微笑みながら口を開く。
「察しが早いですね。では、話が早いですね。太陽くんの寿命は56歳でした。」
「56歳ですか、、?」
「はい。周りより早い寿命ではありますね。」
そんな笑顔でいうことじゃないのに。
56歳。
私より先に死んでしまうのね。
この子を産んだことを後悔してしまいました。
「寿命時計の埋め込みはいかがされますか?」
寿命時計。
きっと56歳なんて寿命時計をつけていたらこの子はきっとからかわれるわ。
そして、自暴自棄になってしまうんじゃないのかしら。
「すみませんが、埋め込みは遠慮いたします。」
「そうですか。では、改めて埋め込み拒否の理由等の書類をかいていただきますので、明日またお伺いいたします。」
「よろしくお願いいたします。」
スーツ姿の女性と医師は軽い会釈をして去っていった。
私は短い人生をともにする母になったのです。