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スタジオに戻ると、なこがすぐに駆け寄ってきた。



他の人がいる前では、手をつなぐ程度。



なのに勢いよく抱きついてくる。



「ん?なこ、どうした?」

「…怒った?」



え…?



目を潤ませ、上目遣いで伺ってくるなこ。



嫉妬でオカシクなった俺に気づいた…?



「怒ってないよ?」

「でも…」



なこを安心させるように軽く抱きしめ、頭を撫でる。



しがみつくなこを抱き上げ、社長の横に座った。



「お疲れ様です」

「おう。コレで決まりそうだよ」



そう言って渡されたのは、なこが一番初めに描いた絵。



最新曲のイメージで描いた、温かみのある絵だ。



メッセージ性の強いその曲の、芯の部分を表したように感じる絵で、俺はその絵が一番好きだった。



「想像していたより遥かにいいものを作ってくれた。正直16歳の女の子だって聞いたときは、依頼したものの、大丈夫か不安だったんだ」



そう話すsakuさんは、その不安は今は消え、なこは信頼できるイラストレーターだと言った。



最初の打ち合わせで、長時間かかって社長に伝えようとしたイメージが、それを上回って絵になって返ってきたらしい。



「それで、なんだけど…nakoちゃんさえよければ、ブックレットの挿絵も全て描いてもらいたいんだ」



SSGのアルバムのブックレットと言えば、それだけで価値があるくらいに毎回豪華な内容で有名。



CDとは別に高値で売られたりもするほど。



数量限定の初回限定版にだけついてくるレア中のレアだ。



なこ、一気にスゴイとこ行きすぎだよ…!



「なこ、できる?」

「おしごと?」



未だ俺の膝の上でしがみついているなこに問いかける。



今回よりも多くの絵を描く仕事だと伝えると、迷わずやると言った。



その時、まださっきの場所にいた雪ちゃん達の方…ginjiさんにチラリと視線がいったのに気づいてしまった。



ginjiさんもこちらを見てニコリと微笑んでいる。



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