teach
嵐のような真友子さんが帰ると、いつもの静かな夜。
なこが絵を描いてる隙に風呂に入って考えるのは、やっぱりなこのこと。
ふわりと笑ったあの顔が頭を占める。
ginjiさんが女性ってオチありえねぇよな〜…
それにオンナだったとしても、なこが最初に笑いかけたってだけで嫉妬しちまう。
「ちっせぇな…」
気づけばもうどうしようもないくらいにハマってた。
なこというオンナに。
「ジュン〜まだ〜⁇」
扉の向こうで俺を呼ぶ声がする。
と同時に開いた扉。
「すぐ上がるからリビングで待てるか?」
「んー」
パタパタと戻る足跡を聞いて、湯船を出る。
あと数週間で完成する社長の家。
それまでにこのモヤモヤを消費しないと、俺がなこから離れられない。
「みんなの顔、描きたい」
「ん?SSGのか?」
「ん」
まだ1.2度しか会ってないメンバーを描くのはさすがに難しいらしい。
顔さえ分かれば大丈夫だというなこに、携帯で調べた3人の写真を見せる。
スラスラとsakuさんを描いていくなこは楽しそうだ。
「なこ、仕事楽しい⁇」
「うん、お絵かき好き」
好きなことを仕事にするなんて、誰もが出来ることじゃねぇ。
今でこそやり甲斐を感じてるけど、俺だって最初はモデルなんて金を稼ぐ手段としか思ってなくて…
なこが今、楽しいと思えてるこの仕事を俺の嫉妬で邪魔するなんて間違ってる。
「なこ、1人でお仕事できる⁇」
「…え⁇」
俺、耐えられそうにねぇ。
次ginjiさんを前にしたら、歳とか立場とか全部無視して態度に出してしまいそう。
次なこが他人に笑いかけるのを見てしまったら、社長なんかに渡さずになこをこの部屋に閉じ込めてしまいそうなんだ。
オカシイくらいにお前が大切すぎるから。
「…ジュン、忙しい⁇」
「うん、これから俺も頑張って働こうと思うんだ」
活動休止からの数ヶ月、復帰しても仕事はセーブしてたから、なことの時間が多すぎた。
溢れるこの気持ちに、俺自身がついていけてねぇから。
少し距離を置こう。