teach



コウくんに頼んで仕事を増やしてもらった。



JUNの需要はまだあるらしい。



季節は夏、仕事は秋のものが多い。



新作の洋服に囲まれ、数をこなしていく。



休めばチラつくなこの笑顔を忘れるために…



そうして、気づけば数週間。



社長の家が出来上がった。



事務所に併設したバカでかい家。



セキュリティ抜群の洋館だ。



「ちょっと〜アンタも運びなさいよ」

「はぁ?俺の引越しじゃねぇ」

「アタシのでもないわよ」



デジャヴのような会話が聞こえる。



そう、今日はいよいよ引越しの日。



なこの荷物はそこまで多くない。



シャンプーハットと、専用タオル、ここに来て買った洋服くらいだ。



段ボールにつめたら2箱分。



荷造りは30分もかからなかった。



問題は社長。



「なんでこの人自宅までガラクタだらけなの〜」



そういう雪ちゃんは、今回も社長の趣味の置物たちに苦戦している。



社員総出で社長の家に集合し、朝から荷物をまとめ始めて数時間…。



詰め終わった段ボールは80箱以上。



なぜか引っ越し業者を全く信用していない社長は、全てを社員に任せ、なことSSGの打ち合わせに向かった。



「焼肉なんかじゃ足りねぇ」

「寿司も奢らせよう」

「いや、今年は社員旅行をヨーロッパにしよう」



言いたい放題のみんな。



俺は社長に逆らえる身じゃねぇから、黙って働きます…



「猫1人で大丈夫なんか?」

「…多分」



SSGとの予定が合わず、あれからなこが単独で行くのは今回が初めて。



社長やケンさんは俺を引っ越しよりも打ち合わせに行かせようとしたけど、断った。



働き詰めにした意味がねぇ。



勝手に嫉妬して、勝手にライバル視して、勝手に負けた気分になって…



ダサい俺は自分だけが知ってればいいんだ。



「守るだけじゃダメとは言ったけどよ…アイツはライオンじゃなく猫だぞ?」

「え…?」

「猫なんて崖から突き落としたら…お、電話だ」



ケンさんの携帯の表示にチラッと見えたのは『リュウ』の文字。



社長から…?



< 119 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop