teach



SSGのメンバーは次の仕事があるといって去っていき、残ったのは社長とケンさんだけ。



その2人も先に社長の車で帰るらしい。



「応急処置はしっかりできてんだ。眠ってるだけだろうから、あんま思い詰めるな」



そう社長は言ったけど、過呼吸の根本的な原因は俺だ。



俺がムリをさせたから、その我慢がストレスになって今日の打ち合わせで耐えきれなくなった。



「先に戻ってっから。猫連れて帰って来いよ」



そんな捨てゼリフとともに本当に帰った社長とケンさん。



仮眠室にはなこと2人きり。



謝ることにかできない俺を許してくれ…。



「…なこ」



眠り姫のように美しい顔で眠るなこは16歳の少女の顔だった。



大人びた顔とは裏腹に、心は純粋無垢のまま。



猫のようにのらりくらりと生きているようで、懐けばとても甘えん坊。



さみしがり屋なのに、我慢だけは誰よりもできる。



その小さい身体に、我慢させないって決めてたはずだったのにな…。



俺が追い詰めてどうすんだって話だ。



「…ゅん。じゅ…ん」

「なこ⁉︎目ぇ覚めたか⁉︎」



握っていたなこの手に力が入った。



なこの目が眩しそうに細く開く。



「ん…ジュン、ごめ、なさっ…い」



意識が戻った途端に泣き出すなこ。



謝りながら溢れ出る涙は止まらない。



「なこ…おしごとっ、ごめっ…」

「なこ、ごめん。ごめん…俺が謝らなきゃなんだ」



震えるなこを力一杯抱きしめる。



抱きしめたのは数週間ぶり。



もともと細い肩がさらに細くなっていた。



「ごめん、ごめんな…もう離さねぇから」

「ジュン…じゅ、ん…」



なこの涙が止まるまで、抱きしめたまま。



謝り続けた…




< 122 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop