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「私、花田 真友子。あなたを産んだのは私なの」

「は?花田…?」

「あなたの父親が立花っていうの。私と彼は結婚しなかったのよ」



それからその人の話を聞いた。



俺を産んだとき、真友子さんは15だったこと。



親の反対で別れざるを得なかったこと。



子供を産んだとほぼ同時に両親が亡くなったこと。



1ヶ月は1人で赤ん坊を育てたけど、金銭的に苦しくなったこと。



結果、立花家に親権を奪われたこと。



俺が施設に入れられたのを知ったのは、最近だということ。



「何で俺が息子だってわかったんですか?」

「直感かしら…細かいこと言うと、目元のホクロとか、笑うと出るえくぼとか…いっぱいあるわ」



俺の名字は公表していないのに、真友子さんは知ってるし…本物の母親?



でも、何で今さら…。



「一目会いたかったの。大きくなった自分の息子に」

「…他にお子さんは?」

「いないわ。結婚もしていない。立花に取られた息子を取り返すために生きてきたの」



文句言うつもりだったのに…。



なんか責められねぇよ。



「今さら母親ずらできないのはわかってるの…急に現れてしまってごめんなさい」

「…俺、あなたを母親だとは思えません。やっぱり20年って長過ぎた。でも…また会いたい」

「会ってくれるの?」

「はい。俺の想像では、母親ってもっと酷いやつだと思ってました。会って文句言って、もう2度と会うこともないって」

「そう…」

「でも、あなたは違った。目を見ればわかります。温かい人だって」



きっとイイ人なんだよな。



「恨みは消えねぇけど…今は感謝もあります。俺を産んでくれてありがとう」



あなたが俺を産んでくれたから、俺は事務所の仲間やなこに会えたんだ。




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