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「う〜ん、あなたに教えたくはないわ」
「は?何言ってんだよ、お前なこに何した⁉︎」
「やーね、私達はあの子の親よ?傷つけはしないわ」
言って笑う女は、さっきまでののんびりした声ではなかった。
夫婦としての女ではなくて、1人の傷ついたような“女”の声だった。
「お前らがなこを傷付けたことを俺は知ってる。なこが傷ついたことを知ってる」
「あら。あの子告げ口しちゃったの〜?でも、あの子が悪いのよ?」
「ふざけんな」
「怖いわ〜。私達はあの子を“拾ってあげた”心優しい“親”なのよ?」
拾ってあげた?
親?
何様だよ、お前ら。
聞いてて呆れるわ。
「これ……みろよ」
「なぁに?これ」
バサッと女たちの元に投げつけたソレ。
なこの想いが詰まったもの。
「この絵…なに?キモチワルイ」
「キモチワルイ?違うだろ、あいつの心の中だよ。なこの叫びだ。ひっそりとあの小さな手で精一杯表してんだよ、心の嘆きを」
それを“キモチワルイ”なんて言葉で済ませるな。
写真集用に頼んでいた絵ではない。
ただただ、なこが描きたいときに描いてた絵の数々。
その中にあったこの絵は、きっとなこの本音なんだ。
目からは光が消え、涙を流していないのに、泣いてるように見える。
明るい色で描かれてるのに、悲しさが溢れ出てる。
グルグルと渦巻く、なこの心の中。
この絵を見たとき、俺はこの絵を世に出したいと思った。
この絵は“イイ絵”だと感じた。
何がとは言えないけど、心に刺さるものがあったから。
だから、俺の写真集の表紙に使ったんだ。
なこの絵は右半分がきれた顔がかいてあったから。
それに繋げるようにして、俺の顔の半分の写真を撮ってもらった。
絵と写真をつなげ合わせてできた表紙。
俺となこの合作。
俺となこの感じること、怒り、恐怖、喜び、愛しさ……
全てを入れ込んだ。