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荒れた台所、ゴミで埋め尽くされた床にひっそりと存在する扉。
ゴミをかき分け、そこを開ける。
インスタント麺や調味料が入った棚を引き出すと、もう一つ、扉があった。
この先に…。
「なこ……今開けるから、一緒に帰ろうな」
聞こえないだろうけど、なこに声をかけたくなる。
この先になこがいると思うと、口が勝手に動いちまう。
いつの間にこんなに純粋に人を求められるようになったんだろう、俺は。
二つ目の扉を開けると、梯子が伸びていた。
迷いなんてない、この下に降りなければなこを助け上げられないのだから。
降りつくとそこには普通の扉。
玄関みたいだ、外からしか鍵がかけられないようになってるらしいが。
扉の隣、小さなボックスにはこの扉のものと思われる鍵があった。
ガチャ……という音を立て、鍵が開く。
「なこ……?いるのか?」
扉を開け、そこは中に入るとそこそこ大きな部屋だ。
トイレやバスルーム、机や棚もある。
壁は白で塗られ、棚には何も入っていないし生活感はない。
「なこ〜〜?どこだ、なこ?」
呼びかけても返事はなく、とてつもない不安に駆られる。
遅かったとか言わねぇよな……?
「…………ん」
部屋を半分に仕切っているカーテンの向こう、ベッドルームらしい空間。
「なこ⁉︎」
今、確かに声が聞こえた。
カーテンを壊れるくらいに力一杯に開け、目を凝らす。