天国への切符



「はぁっ」


小さくため息をつきながら、あたしは仕方なくお弁当袋を開けた。


いつもと同じお弁当箱。

中身は…



「うーわ!ハンバーグとオムライスじゃん!すっげー美味そう!」


開けた途端、隣から大きな声が響いた。


「完全に手作りだな!冷凍食品!って感じのものが一切入ってねーじゃん」


「…まぁ。うちのお母さんそういうの入れないっていうか。栄養バランスとか?なんか考えてるんだって、よく分かんないけど」


「へぇ〜っ!羨ましいな!毎日こんな弁当食えるなんて」


「そんなことないよ、お弁当持って来てる子少ないし。あたしも食堂がいい、ラクだし」


「そうか?幸せだと思うけどな。弁当ひとつ作るのにも朝早くから頑張ってくれてんだぜ?」



何分かったようなこと言ってんだか…。


そう思いながらもふとその言葉が心にとまった。


弁当ひとつ作るのにも朝から頑張ってるんだ…なんて。


こんなの普通で、あたしにとっては当たり前のことだからよく分からないけど。


だけど羨ましい、なんて言われると毎日嫌だったお弁当も少しだけ好きになれるような気もした。


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