天国への切符



「…全然バカじゃねーよ、お前」



吉岡が隣でそうつぶいて。



「気が付けただけでもすげーと思うよ、俺は。何も分かんねーまま大人になる奴だっているんだ。だから…全然バカなんかじゃない」



そう言いながらあたしの頭にポンっと手を置いてきたから…




「……やめてよ…」



泣きたくないのに。



「…っ…」



気付けばあたしは泣いてしまっていた。



あたしが泣くのは違うって分かってるのに。




涙が全然止まらない。



「おい、泣くなって」


「…泣いてないし」



零れ落ちてくる涙を見られないように、ただうつむいていた。


その間吉岡は、それ以上は何も言わずに隣にいてくれた。



本当かっこ悪い。


でも…

この瞬間がひとりじゃないと思うと不思議と寂しくなくて。


隣に吉岡がいるだけで、それだけで救われていたような気がする。


< 160 / 363 >

この作品をシェア

pagetop