天国への切符



「あのね、みんなには言わないでくれって言われてたから話してなかったんだけど」



美波はそう言うと一瞬黙り込んで。

だけどしばらくすると、意を決したようにあたしに話をした。



「サエとケンカになる前だから…6月とか7月くらいだったかな?私、時々サエの家に遊びに行ってたんだ」


「うん…」


「そしたらサエの新しいお父さん、サエにすっごい厳しくて。私がいてもお構いなしに怒鳴りつけたり…ヒドイ言葉いっぱい言ったりしててさ」


「えっ?」


「だからもしかしたらサエ…あのアザ、あのお父さんに殴られたりしてるんじゃないかな?って思ったの」



バクバクしていた心臓に、ギュッと痛みが走った。


殴られたり…?


でも…そんな…



「分かんないよ?違うかもしれない。でも…もしかしたらって思って…とりあえず真優には話しておきたくて」



美波の話を聞くまで、何も知らなかったけど。


だけどそのもしかしたらが、もし本当にそうだったら?


だとしたらサエの不自然なあの顔の傷も、全てが繋がる。



< 166 / 363 >

この作品をシェア

pagetop