天国への切符



自転車をとめて、ゆっくりと近付いた。



公園を囲むような金網のフェンス。

その前に立ち、吉岡は遠くを見つめている。



だから驚かせてみようと、そっと近付いて。



「わっ!」



真後ろから、大きな声をかけた。




そしたら本当にビクッと反応して。



「何だよ平野か…驚かすなよ」



そう言ってまた、前を向いた。



でも…

あたしは気付いてしまったんだ。



吉岡が泣いていたことに。



目に涙がいっぱい浮かんでいて。

その涙が、両方の目からこぼれていたことに。




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