天国への切符



「あのさ……あたしで良かったら、何でも聞くよ?」


「えっ?」


「あたしの悩みも色々聞いてくれたでしょ?だから…」


「ははっ、別に悩みなんてねーし。だいたいあってもお前には言わない」




何でもいいから何か力になれたらって。

あたしにできることなんて何もないかもしれないけど…話を聞いてあげることくらいはできるからって。



そう思って言ってみたけど。



吉岡は話してはくれなかった。


あってもお前には言わないって。


そう言ってはぐらかされた。




あたしはこいつに助けてもらったのに。


いろんな悩みとか聞いてもらったのに。





「あっそ!人が親切に言ってあげたのにさー、親切に!」


「小さな親切、大きなお世話だ」


「ムッカー!性格悪いんじゃない?」


「ははっ、お前に言われたくねーよ」


「どういう意味ですか?」



だからあたしは、聞けないのなら笑わせてあげたいと思った。



「そういう意味ですけど」


「もう一回言ってみろ!ほらっ」


「ちょっ、お前っ、あはは!やめろって」



悩みとか辛さとか、こいつに何があるのかは分からないけど。


とにかく笑わせて、今のこの瞬間を楽しいものに変えてあげたかった。


だから思い切りわき腹をくすぐりまくって。





「あははっ、だからやめろって、頼む!あはは、ちょっ、俺が悪かった」




吉岡を笑顔にさせたんだ。



< 185 / 363 >

この作品をシェア

pagetop