天国への切符
だけどその夜。
ご飯も食べずに部屋にこもっていたけど、お風呂に入るためにあたしは一階に降りた。
そしたらリビングからお父さんの話し声が聞こえてきて。
気付かれないように、廊下で耳を済ませた。
だけどなんとなくしか聞こえてこない。
そっと音を立てないようにリビングのドアを少しだけ開けた。
「…っ………どうしていいのか分からないの…」
…お母さん?
その声は何故か泣いているようだった。
驚いたあたしは、開いた隙間からリビングの中を覗く。
「もう無理しなくていいんじゃないか?」
すると、お父さんがそう言いながらお母さんのことを抱きしめていた。
何で?
何でお母さんが泣いてるの?
あたしがあんなこと言ったから?
でも……お母さんがあんな風に言うからじゃん?
お母さんが悪いんじゃん…
頭ではそう思おうとした。
なのに…泣いているお母さんを見ると、胸が苦しくなった。
お母さん…そんなに疲れてたんだ。
もしかしたら、あたしの知らないところで…ずっとずっと、我慢していたのかもしれない。