天国への切符
ひどく冷え込んだ風がブワッと吹いて、あたしの髪を大きく揺らす。
「あ、真優!ちょっと待って」
「何?」
家を出てすぐにお母さんに玄関先で呼び止められた。
「寒いでしょ?朝すっごい冷え込んでたらしいの。帰りも寒いだろうしすぐコート取ってきてあげるから」
「いいよもう」
「ダメダメ、風邪ひいちゃうわよ?」
お母さんはそう言うとあたしの言葉を聞き流して家の中に入っていく。
「いいってば!もう行くから!」
お母さんに聞こえるように、あたしは大きな声でそう言って。
自転車にまたがると、いつものように走り出した。
お母さんって、何でいつもああなんだろう。
あたしが嫌味を言っても次の日にはいつも普通で。
怒られてもケンカしても、次の日には変わらずあたしを送り出してくれて。
それでまた…帰ると玄関まで出迎えにきて。
何でいつも…お母さんは変わらないんだろう。
怒るくせに、優しくて。
口うるさいくせに、今みたいに風邪ひいちゃうわよ、とか言ってコート取りに行こうとしてくれたり。
親って……すごいよね。
お母さんって…毎日すごいよね。