天国への切符
いつもと同じ朝だった。
走りながら目に映る景色も、町並みも。
いつもと同じような朝だった。
だけど…
「真優〜!」
しばらく走った頃、後ろからお母さんの声が聞こえて。
振り返ると、自転車に乗ったお母さんがいて。
その手には、あたしのコートが掴まれていた。
あたしのために追いかけてきたの?
遠くから、だんだん近付いてくるお母さんの姿。
その顔はやっぱりいつもと同じで。
あの夜に見た泣き顔なんかじゃなくて。
笑ってたんだ。
コートをヒラヒラと掲げて。
…いつもと同じように笑ってたんだ。