天国への切符
「娘さんですか?」
「はい」
「お母さんの血液型は?」
「Aです」
「おうちの人に連絡はとれてますか?」
「…します、今から…」
夢だから。
だから救急隊員の人と淡々と言葉を交わした。
夢だから。
だからもうすぐ覚めると思いながらお父さんに電話をかけた。
夢だから……
もうすぐ朝が来る。
本当の朝が来るから…
自分に何度もそう言い聞かせてあたしは落ち着いていた。
とても冷静だったと思う。
病院に着いてICUに運ばれてからもずっと。
その前で静かに座っていた。