天国への切符




「娘さんですか?」


「はい」


「お母さんの血液型は?」


「Aです」


「おうちの人に連絡はとれてますか?」


「…します、今から…」





夢だから。


だから救急隊員の人と淡々と言葉を交わした。


夢だから。


だからもうすぐ覚めると思いながらお父さんに電話をかけた。



夢だから……

もうすぐ朝が来る。



本当の朝が来るから…


自分に何度もそう言い聞かせてあたしは落ち着いていた。


とても冷静だったと思う。



病院に着いてICUに運ばれてからもずっと。


その前で静かに座っていた。



< 205 / 363 >

この作品をシェア

pagetop