天国への切符
ようやく落ち着きを取り戻したあたしは、それからお父さんと一緒に祈るような思いで待った。
慌ただしく出入りする看護師や医師。
お母さんがICUに入ってから、三時間近くが経っていた。
一分一秒をこんなにも長く感じたのは初めてかもしれない。
長くなればなるほど不安ばかりが大きくなって。
これは夢じゃないのかもしれないと、どんどん怖くなっていく。
…その時だった。
ICUのドアが開き、手術室から二人の医師と三人の看護師があたし達の元に歩いてきた。
「手を尽くしたんですが…残念です……11時51分ーーーー」
そこからの言葉は聞こえてこなかった。
11時51分。
ただその時間だけが耳に残っていた。
そして…
看護師さんが呆然と立ち尽くすあたしとお父さんにこう声をかけた。
「お母さんのお顔、見てあげてください」
そう言って、ドアの向こうへと誘導してくれた。