天国への切符
お父さんが先に歩きだした。
あたしも、そのあとをついていった。
見たこともないようないろんな機械や器具が中にたくさん並んでいた。
その中に、お母さんを見つけた。
お母さんの顔は、顎に擦り傷があるくらいで。
とても綺麗な顔をしてた。
やっぱりウソじゃん。
寝てるだけでしょ?
「お母さん…起きなよ」
ドッキリとかマジくだらないから。
「早く起きてよ…笑えないってば」
本当、悪趣味だよ、こんなことするなんて…
「ねぇ!起きてよ!何してんの?何で何も言わないの?ねぇ!」
眠っているようなお母さんの体を思いっきり揺さぶった。
だけど、動かなくて。
何も反応しなくて。
「ねぇ……聞いてんの」
お母さんの手をそっと掴んだ。
あったかい…
死んだら冷たくなるんでしょ?
「お父さん、手触ってよ!あったかいんだよ……死んでないよね?死ぬわけないよね?お母さんが…」
泣きながらお父さんを見た。
「……っ……」
お父さんは、声を殺すように泣いていた。
初めてだった。
お父さんが泣いているのは。
生まれて初めてだった。
こんなお父さんの姿は。