天国への切符



「良かった…」



次の瞬間…勝手にドアが開き、吉岡がそう言ってあたしの目の前に現れた。



「お前の声が…聞こえたから」



そしてそう言いながらあたしの頭をそっと撫でると、何故かそのままその場で抱きしめられた。



「平野のお母さんが亡くなったって聞いてから…ずっと心配で。だから…お通夜の夜から何度も家の前を通ったりしてたけど」


「…んっ…」


「学校もずっと休んでるし…全然会えないし…」


「んっ…」



何でだろう。涙が止まらない。



「番号を教えてもらって携帯にも何度もかけたんだ。でもずっと電源切れてるだろ?」


「…んっ……うっ……」



苦しかった。


あたしなんかのことを気にかけてくれていた吉岡の気持ちに、苦しくなった。


あたしなんかに、そんな価値ないのに。

心配してもらえるような、そんな人間じゃないのに。



< 229 / 363 >

この作品をシェア

pagetop