天国への切符



「ごめんな、真優」



カーテンの隙間から朝日が差し込んできた頃、お父さんはそう言って立ち上がった。



「忌引き休暇も昨日で終わって、今日から仕事に行かなきゃならないんだ」



あたしの頭を優しく撫でたお父さんは、あたしの目線に合うように前屈みになると真っ直ぐに視線を合わせた。



「後悔してるのは真優だけじゃない。お父さんだっていっぱい後悔してることがある。でも…時間はもう取り戻せない。生きてる俺たちは泣いても後悔しても、これからを進んでいかなきゃならないんだ」


「……」


「学校…ずっと休んでるわけにもいかないだろ。今日はゆっくり休んでてもいい。でも…明日からは行けるか?」



そう聞かれて、少し黙りこんでしまった。


でも、あたしはちゃんと答えた。



「…うん。明日からは…行くよ」



お父さんの気持ちも分かるから。


だから…もう心配かけたくないと思った。



「じゃあ…用意して行ってくるよ」


「うん…」



お父さんの背中は寂しそうに見えた。


悲しそうに見えて、胸がギュッとなった。



あの日、お父さんとお母さんがリビングで抱きしめ合う姿を見た時には、お父さんはもう知ってたんだよね。


知っていて、ずっとお母さんを支えてたんだよね。


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