天国への切符



吉岡は、不思議な存在だった。


あたしがピンチの時。

悩んでる時。

苦しい時。泣きそうな時。


何故だかいつも、現れてくれて。



「平野、サンタに今年のクリスマスは何が欲しいか頼んだか?」


「は?サンタ?」


「おー、サンタ」



そして、突拍子もないことを言って笑わせてくれたり驚かしてくれる。



「あたしそんなにメルヘンに生きてないから」


「うーわ、夢がねーなー!願えばプレゼント貰えるのに」


「っていうかあたし、クリスマスが誕生日なの。だから昔っからクリスマスで損してきたんだよね」


「えっ?誕生日が…クリスマスなのか」


「そっ。だから毎年プレゼントもまとめられちゃってたし。損する気分でしょ?っていうか…サンタなんかいないし」


「もっとメルヘンに生きろって」


「ははっ、何それ。でも、そうだなー。プレゼントかぁ…」




言いながら頭に浮かんだことがあった。



「何か欲しいものあんのかよ?」


「…うーん」



でも、絶対に手に入らないから。



「何だよ?」


「……いいよ、別に」


「何だよ、言えよー」



言ったって意味ない。

でも…言うだけならいいよね?


叶わなくても、願望くらい。


口にするくらい…いいよね。



「…最後に一回だけでいいから、もう一回お母さんに会いたいなーとか。あははっ、天国につながるようなそんな切符があったら欲しいなーなんてね」


「切符…か」


「あたしさ、ずっとダメダメな娘のまんまだったから。だから…ごめんねとありがとうを…言いたいなぁって」




叶わないから、口にしてもいい。


だって、サンタクロースなんていない。


いたとしても、叶えられないプレゼント。


それでもいい。願うくらいは、いいかなって…思ったんだ。


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