天国への切符



「ダメ!サエ」



フェンスを越えようとするサエに、大きな声で叫んだ。



「……私がいなくなったら、全部うまくいくよ…」



だけどサエはそう言いながらフェンスをよじ登っていく。



「やめて!そんなことしても…何にもならない!サエがいなくなったら…あたし達が悲しいじゃん!」



言いながら、涙がこぼれた。



もう、失いたくない。


何も、誰も失いたくない。



いなくなっていいなんて、そんな人間は絶対にいない。




「サエ!やめてよ!」


聖子も泣いていた。



「いなくなったりしたら許さないから!」


ノアも泣いていた。




「サエを…守るから!絶対に私達はサエのこと守るから…だから……っ…お願いだからやめて…っ…」



美波も泣きながらサエに言った。



サエは、何でこんなことをするのか。

どうしてこんなことになっているのか。



あたし達は何も分からない。



でも…



「あたし達は友達でしょ⁉︎」



あたしが叫んだ瞬間、サエは声をあげて泣き叫んだ。




「…んか……私なんか!…私なんか…どうなってもい…んだよ…」



泣きながら、その場に崩れ落ちた。



その瞬間、サエを囲むようにあたし達は駆け寄った。



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