天国への切符



「…っ……」



サエは俯きながら、ポロポロと涙をこぼしていた。


いつも強くて、どんな時も平然としてて。


あたし達に涙なんて見せたこともなかったサエが…大粒の涙をこぼしていた。




「…サエ?何があったのか…話してくれないかな」



まだ何も分からない。


だけど死にたいなんて言ったサエの心は、普通じゃない。


何かを思い詰めない限り、絶対にそんな言葉を口にしたりはしない。



「死にたいなんて…言わないでよ…っ…生きたくても生きられなかった人だって…いるのっ…」



言いながら、お母さんのことが頭に浮かんだ。



「死にたくなくても…死んじゃった人だって…いるんだよ…っ…」



泣きながら、お母さんのことを想った。


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