天国への切符


一緒に帰ろうなんて…


あんなふうに突然降ってきたようなラッキーが嬉しかったのに。


静かな雰囲気に包まれていると、ロクに話すことも出来ない自分が情けなくてもどかしかった。


でも、話したいことがあった。


本当なら、誰にも話さずに俺の心の中だけにとどめておきたいと思っていたけど。


あの日…平野が言ってくれたから。



「あのさ……あたしで良かったら、何でも聞くよ?」



泣き顔を見られてしまった俺に、平野は真面目な顔でそう言ってくれたから。


あの時からずっと。

平野になら、話せるかもしれないって。


そう思える自分になっていった。



弱さを見せるのはかっこ悪い。

出来ることなら泣き顔なんて見られたくなかった。




でも…そうなってしまったからこそ、俺はちゃんとこの五年間に向き合えたような気がしたんだ。


いや、きっとそれだけじゃない。


家族を失った平野の、泣き叫んだ声を聞いた時。

肩を震わせながら、泣きじゃくる姿を見た時。


助けたいと思った。

支えたい、守りたいと思った。



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