天国への切符


世界は、変わるんだ。


小さなきっかけでも、大きく、大きく変わるんだね。



賑やかな教室にチャイムが鳴り響く。


そしていつものように、それぞれが席に着いていく。


だけど、不思議だね。


同じ場所なのに、少し前とは全然違って見えるんだ。


冷め切っていたこの場所が、あたたかく変わったなって。



「おい、ここ寝癖ついてるぞ」


「えっ?」



振り返った後ろの席には、吉岡がいて。



「ったく…直してから来いよな」


そう言ってあたしの髪をわざと引っ張った。



「痛っ!ちょっと引っ張んないでよねー」


「ははっ、だって引っ張ってほしそうにここだけハネてんだもん」



ケラケラ笑う吉岡に、ちょっとムッとしたけど。



「もうっ…」



いつからか、この笑った顔が好きになってた。


だから…



「ん?どした?」


後ろを振り返ったまま、思わずジッと見つめちゃってて。



「な、なんでもないし」


ドキドキしながらすぐに前を向いた。


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