天国への切符
ぶっちゃけ家事とかやったことなかったし。
お母さんがいなくなってからは掃除と洗濯をお父さんと分担してやってて。
それだけでも大変だなって思ってた。
だから朝はパン。お昼はあたしもお父さんも学校と会社の食堂。
晩ごはんは、お父さんが買ってくるか簡単にできるものを作ってくれるか。
だいたいそんな毎日だった。
でも、ちょっとずつかもしれないけど…料理も頑張ってみようかなって。
「ちょっとこの白菜見てよー、切れてないじゃん!」
お父さんの切った、三つ繋がった白菜を見て思ったんだ。
不器用でもいい。
慣れない手つきでもいい。
お父さんにも出来るんだもん。
あたしにもきっと、ちょっとくらいは出来るはずだから。
「明日から冬休みだし。とりあえず明日…あたしが作ってあげるね」
「一応念のため胃薬用意しててくれな」
「ひっど!やっぱりやめた」
「うそだよ、ごめんごめん」
静かだった食卓に、あたしとお父さんの笑い声が響く。
ねぇ、お母さん?
見える?聞こえる?
あたし達、ちゃんと進んでいくからね。
時々は振り返るだろうけど、ちゃんと前を向いて歩いていくからね。
だから…心配しないでね。
お母さんみたいになれる自信はないけど。
精一杯、今を生きていくからね。