天国への切符


真優へ


誕生日おめでとう。
今日で真優も16歳だね。
この手紙を読んでるってことは、多分お母さんは病気が悪化して、もうそっちの世界にはいないから、一緒に誕生日をお祝いしてあげることはできないけど、おめでとうはちゃんと伝えたかったから手紙で残しておきます。

お父さんと結婚した時、お母さんは幸せになったと思ったけど、真優が生まれた16年前、お母さんは世界で一番幸せになりました。

真っ直ぐで優しい子になりますように。小さな手でお母さんの指をギュっと握る真優を見た時、そんな想いを込めてお父さんと名前を決めたんだよ。

小さな頃は女の子なのに男の子より活発で。毎日毎日泥だらけになって遊んでたけど、おばあちゃんを大事にしてくれたり進んでお手伝いをしてくれたり。
真っ直ぐ優しく育ってくれてる真優は、お母さんの自慢の娘でした。

だから思春期を迎えた頃からかな?会話が少しずつ減って、ぶつかることが増えると、ちょっとだけ寂しい日もあったんだよ。

でもきっとお母さんにもそんな頃があったから。お母さんのおばあちゃんがお母さんにしてくれたように、お母さんも真優から目を逸らすことだけはしたくなかった。

鬱陶しがられても、反抗されても。
それでも何があっても大事だから。
開いていく距離を必死になって埋めようとしてたんだと思う。

ごめんね真優。門限で縛り付けたり、お母さん怒ってばかりいたよね。

でもね、大事な娘だから守りたかった。

彼氏が出来たんだろうな、って気付いた時も。本当は応援してあげたかったんだけどね。真優がいつも不安そうに寂しそうな顔をしてて。
だからお母さん、そんな恋を応援してあげることは出来なかった。

真優を本当に大事に思ってくれる人なら真優にあんな顔はさせないし、真優をもっと笑顔で幸せな顔にさせてくれるはずだから。

そんな人に出会ってくれるといいなってお母さんは思ってるよ。そうなれば安心して空の上から応援するからね。


それから友達も。
最近帰ってくるのが早くなってるけど、学校で喧嘩でもしたの?サエちゃん達と何かあった?真優が泣いた顔をして帰ってきた時、心配で眠れなかったんだ。
でもね、たくさん喧嘩しても、また仲直りして。泣いて笑って、そうやって本当の友達になっていくから。

涙の数だけ、強くなってるんだよ。

たくさん泣いたら泣いた分、きっと真優は強くなってる。


だからいっぱい泣いたら強くなったと思いなさい。そしたらきっとまた笑えるようになるから。


お母さんも病気が分かってからは怖くて寂しくていっぱい泣いたけど。
真優がいたから強くなれた。
真優がいたから目が覚めたら毎日笑顔でいたいと思えた。

ちょっと生意気にはなっちゃったけど、真優はいつまでも可愛い娘で、お母さんの一番大事な宝物だから。


だから真優、約束してほしい。

泣いた後には笑顔になって。

笑顔でたまには空を見上げて。


お母さん、空からちゃんと見守ってるから。

これから先もずっと。

高校の卒業式も、選んだ将来の道も。

いつか結婚してお母さんになる真優も。

ずっとずっと見守ってるから。


だから、忘れないで。

お母さんのこと、時々でいいから思い出してね。

忘れちゃったら化けて出るからね、なんてね。ウソウソ。


真優がお母さんの娘で良かった。

真優と過ごせた時間はお母さんの宝物だよ。

16年前生まれてきてくれてありがとう。

たくさんの幸せをありがとう。

あなたの幸せをこれからもずっと願ってます。


お母さんより

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