天国への切符


だけどそんなこと、すぐに忘れた。


駅に着いて携帯を取り出すと、高鳴る胸の音を感じながら電話をかけた。


「もしもし」

「あ、もしもしケント君?今駅に着いた」

「そっか。じゃあ、適当にうち来て」

「うんっ!」


ドキドキしながら電話を切ると、気分は一気に最高潮になっていた。


ケント君に会える。

久しぶりに会える!


弾むような心を抑えて切符を買ったあたしは、改札を抜けるとちょうどタイミング良く到着した電車に足早に乗り込んだ。


サエ達と映画に行くなんてウソだし。


電車に揺られながら窓の向こうに見える景色を見つめて、あたしは心の中で思う。


彼氏と遊ぶなんてこと、親に言うわけないじゃん。

ただでさえ口うるさいんだし。


本当のこと言ったら相手は誰だとかいくつだとか。

いちいち聞かれるに決まってるから。


だからウソをついた。


ケント君との時間だけは…誰にも邪魔されたくないから。


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