天国への切符
つかまれた肩の手をふりほどき、そのまま黙って二階へ上がろうとした。
「待ちなさい、お母さんは聞いてるの。答えなさい」
別に聞かなくても分かってるんでしょ?
時間の無駄。
何でそんな無意味なことをさせるのか理解できない。
「真優」
…うるさい。
「飲んでるけど?何か文句ある」
あたしがそう言って睨むと、お母さんは驚いた顔をして。
「あなたまだ15歳でしょ?」
真っ直ぐあたしの目を見てそう言った。
「未成年の飲酒喫煙は法律で禁止されています、でしょ?」
「え?」
「知ってるよ、んなことぐらい。でもルール守ってない人間なんていっぱいいるじゃん、大人だってそうじゃん。守ってないじゃん!なのに何で私ばっかり説教されなきゃなんないの!」
話をすり替えたつもりはない。
大人だってルールを守ってないんだ。
最近だってそう。
サエ達と駅ビルのエスカレーターに乗ってる時、後ろからスカートの中を盗撮しようとしてきたおっさんもいた。
援交に誘ってきたサラリーマンもいる。
万引きしているおばさんを見たこともある。
テレビで観る犯罪者たちだってみんな大人ばかり。
大人だってルールを守ってない。
なのに、未成年だから、子供だからって親も先生もいちいちあたしたちを縛り付ける。