天国への切符
「おいおい、待てって!」
逃げていたのに、あっという間に追いつかれた。
手を掴まれて、その途端にもっともっと怖くなった。
「無視すんな、ふざけんなよ?」
だってこいつ、何かキレてるし。
何か…おかしい。
「ひとりで酒なんか飲んでも楽しくないだろ?」
は?
キレたかと思えばニヤニヤしながらあたしの持っていた缶酎ハイを見つめる。
「酒なんかよりもっと気分良くなるもんあるけどやるか?」
「けっ…結構です!帰るので…」
掴まれた手を思い切り振りほどき、勢いよく走り出した。
「待てこら!」
ただ怖かった。
こいつ、絶対おかしい。
誰か…誰か助けて!
必死で走った。
心臓はバクバクでゼーゼーと息があがる。
こんなに走ったのは、一体いつぶりだろう。
男との距離が少しずつ離れていく。
でもまだ、油断できない。