こんにちは、付き合ってください!


「ま、まって! えっと、先ず最初に君は……」

「あ、俺1年の玉城 智春(タマギ チハル)って言います! あの、ご存知ないですか? 俺、校内では大分有名だと思っていたんですけどね……」

「あ、いやいや、勿論知ってますよ!」


玉城 智春。

校内でこの名を知らない者は居ないはずだ。彼はこの学校のちょっとした有名人なのだ。

まず、容姿。
「男らしい人がいい!」なんていう女性には受けないかもしれないが、彼は可愛らしい容姿をしている。二重の大きい眼や、誰もが羨ましがるような色白で、しかも小顔。そして金髪がよく似合う。どれもこれも、母性本能を擽るような愛らしさを持ち合わせていた。

それに彼の人柄。
いつもニコニコして彼は俗にいうムードメーカーというやつだった。学年もクラスも違う私だが、校内ではかなり有名だ。ムードメーカーといっても、下品なことをいったりするわけでもなく、誰に対してもニコニコしていて、時に面白いことを言い、人を笑顔にさせる……そんな子だ。

彼は運動神経も良いらしく、色んな部活から引っ張り凧のようだ。しかし、彼自身帰宅部で助っ人に行くくらいだと、これまた風の噂で聞いた。


そんな玉城くんを、女子が放っておくわけが無い。

入学式からまだ3ヶ月ほどしか経っていないが、既に「ちはるファンクラブ」という物が存在している。私は決してそんなクラブに属していないが。




そして、私は、
そんな智春くんに告白されてしまったのだ。


「えっと、玉城君は私をからかっているの? それとも、何かの罰ゲームで告白する羽目になったとか……?」

「ち、違います! 俺、本当に先輩のことが……!!」


目は、本気だった。

ちなみに本気と書いてマジと読みます。いや、今はそんな事どうでもいいんですけどね! それよりこれは本当、もう、どうしたら良いのだろうか。


「……えっとね、玉城君。私ブスだよ? しかも年上のおばさんだよ?
ドジでトロくて、バカな……どうしようもない、何の取り柄もない女だよ?」

「そんなことないです! 先輩はとっても素敵な人ですよ! ねえ、先輩、お願いします。俺、絶対に先輩を幸せにできますよ?」


うるうる。
ちはるファンクラブの会員さんなら即オーケーするような、この愛くるしい目。だがしかし、私には効かない。

何故なら、私は玉城君のような子はタイプじゃないからだ。


確かに、玉城君は可愛い。それにかっこ良くて完璧だ。ただ、恋愛対象として見れるかといえば、答えはノーだ。年下はあくまでも年下で、それが子供らしい容姿となれば尚更だった。

それに、彼を支持するファンクラブの会員が黙っていないだろう。もしこの告白にオーケーなんかしてしまった日にはお呼び出しの毎日だろう。体育館の倉庫とかに呼び出されて、リンチとかされるんだ。絶対そうに決まっている。

が、ここで(玉城君が本気の告白だった場合)ノーと返事をしてしまったら、彼を傷付けてしまうかもしれない。


イエス→体育館倉庫でリンチ
ノー→玉城君を傷付けるかも(この場合、下手すればファンクラブにリンチ)



こうなったら、彼に出す答えはこれしかない。


「えーっと、考えてみるね」


これだろう、これだろう。寧ろこれ以外に何て返すのが正解か教えてほしい。

恐る恐る彼の表情を伺う。
泣いてはいない、ようだ。俯いているから分からないが。

「……た、玉城君?」

「れ……、す」


「はい?」


「……嬉しいです! 待ってますね、俺! あっ、でも早めに返事してくださいね。いい返事、待ってますから!」


「じゃあ俺、バスケ部の助っ人に行かなきゃいけないんで!」なんて、爽やかに言って彼は去って行ってしまった。私はあっ、と情けない声を漏らし、引きとめようとしたが既に玉城君は見えなくなっていた。




……もしかしたら私は、一番大変な選択をしてしまったのかもしれない。
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