花火


でも、不器用な僕はそれができなかった。

胸にたまった気持ちを伝えることができなかった。

だから、せめて僕は君を抱きしめた。

不器用な僕にはこれしかできなかった。

君は、僕の腕の中で小さく体を震わせている。

その姿を見て僕はまた思った。

愛しい。

守りたかった。

でも、僕には何もできなかった。

ただ抱きしめるだけ。

それが僕にできた最後のことだった。


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