花火


君の家に着くと、君は静かに僕の手を離し、玄関に向かっていく。

僕は君の後ろ姿を黙って見つめていた。

すると君は僕の方にやってきた。

胸の高さほどあるフェンスの上に小さな手を乗せて僕を見つめた。

僕は言おうとした。

「またね」

だけど、心がそれを止めた。

言っちゃだめだ。

まだ伝えてないのに。

まだ言っちゃだめだ。

「またね」

その言葉はまだ言っちゃだめなんだよ。



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