花火
◇精一杯のキス
二人だけのあの場所まであと少し。
あと5分もすれば君の元につく。
そう思うと自然と僕の足は早く動きはじめた。
学校の帰り道にゆっくり歩いた二人の一本道を今、一人で一生懸命に走る。
そして明日のこの時間には一人でこの道を歩くことしかできない。
まるで僕の未来を示しているかのようだった。
やがて一人で歩くことしか出来なくなるなら、せめて今は一人で精一杯走ろうと。
二人で手を繋いで歩こうと。
僕は大きな木の近くにまでやってきた。