花火
◇精一杯のキス


二人だけのあの場所まであと少し。

あと5分もすれば君の元につく。

そう思うと自然と僕の足は早く動きはじめた。

学校の帰り道にゆっくり歩いた二人の一本道を今、一人で一生懸命に走る。

そして明日のこの時間には一人でこの道を歩くことしかできない。

まるで僕の未来を示しているかのようだった。

やがて一人で歩くことしか出来なくなるなら、せめて今は一人で精一杯走ろうと。

二人で手を繋いで歩こうと。

僕は大きな木の近くにまでやってきた。



< 23 / 67 >

この作品をシェア

pagetop