花火
僕は頭の中に浮かぶ、受け止めたくない現実を払うかのように君に声をかけた。
「遠くに行くって何か楽しそうだね。
新しい出会いとか、新しい思い出とか。」
僕は満面の笑みを作ってそう言った。
「私は……。」
君はそう言い掛けて、話す言葉を止めた。
「何?」
「私は……。」
君の肩が小さく震えているのが分かる。
「私は新しい出会いなんかよりも、新しい思い出なんかよりも!!」
そう言いながら振り向いた君の口に精一杯の想いをこめてキスをした。