花火


僕はいつものように日が暮れたころに立ちあがった。

そして、君に手を伸ばす。

君は僕の手を見つめ、しばらく僕の手を取らなかった。

「帰ろ?」

僕は優しく言葉をかける。

きっと君は笑顔で僕の手を取る。

当り前のように僕はそう思っていた。

疑う心は欠片もない。

だけど、君は僕の手を取らずに立ち上がった。

そして、

涙で揺れる弱い瞳で僕を見つめてきた。


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