アヴァロンドレイク

7話【好きだからですよ…】
「くそ!どうなってんだよ!!」
「こっちのセリフですよ!」
黒刀はキュウビの手を引いて走っていくがすぐ後ろに青い瞳の少年が来ていた。
「無駄だ……ここは俺の世界だから何処に逃げたって無駄だよ」
「くそ!」
「やっぱりあなたアヴァロン使い」
「そうだよ……ここは【エターナル】僕の理想の世界だよ」
青い瞳の少年は手を上に上げると黒刀達の目の前に大きな氷が地面から突き出てきて黒刀達は通れなくなってしまった。
「くっ…」
「さぁ…返してもらおうか…」
「あ…そうそう自己紹介が遅れたね」
青い瞳の少年は手を胸にあて、自己紹介を始めた。
「僕の名前はレイ以後お見知りおきお…」
「あ、こちらこそよろしくお願いします」
キュウビは頭をさげ言い始めた。
「って、いやいや自己紹介してる場合かよ!?」
「ていうかお前なんなんだよ、なんで俺らをこんな所に連れてきた!?」
「なんでって……なんでだっけ?」
「知るか!!!!!!」
「まぁ、いいや」
いいのかよ……
「あ!思い出した…そうそう君の隣にいる、その女の子のアヴァロンを返してもらいに来たんだった」
「は?キュウビのこと言ってんのか?」
「私ですか?」
「そうだよ…早く返してほしいな、そうしないと『クロノス様』に怒られちゃうよ……」
「そんなこと言われても、返せないんですけど」
「なんでだよ?ほら、返してやれよ」
「な!無理ですよ!!」
いや、だって今にも泣き出しそうな奴が目の前に居るんだぞ……可哀想になってきた。
「無理って……なんでだよ?」
「それは……アヴァロン使いはアヴァロンそのものが命なんです……」
「え…」
「そうだよ、ほら、返し方も分かったところで返してくれない?」
「命って……じょ、冗談だよな」
「………」
「あれ?まさか、君知らなかったの?アヴァロン使いはアヴァロンそのものが命でそのアヴァロン使いが死んだらアヴァロンは新たな器を求めてアヴァロン使いから出てくるんだよ」
「だから、今からその女の子を殺してアヴァロンを返してもらうよ」
青い瞳の少年はニヤニヤしながら少しずつ近づいてくる。
「そんな…」
「ご主人は逃げてください……これは私の問題です」
「ふざけんな…」
「え…」
黒刀はキュウビの頭をなで始める。
「そんなこと言うな、てかオメェが巻き込んどいて私の問題ですってふざけんなっての」
「ご、ご主人……」
「ありがとうございます…」
「当たり前だ!」
俺とキュウビが話しているとレイはニヤニヤが完全に笑っていていた。
「ふふふ…はははwww」
「何笑ってんだ」
「いや、だって…ふふふwwくだらないなぁ~なにそれ?友情ごっこ?」
その笑顔が一瞬で殺意の顔になった。
「………そういうの見てると心底ムカツクんだよね……」
レイから完全に殺気を感じ手の平から氷の刀みたいなのが出てきていた。
「……ブリザードアレス」
「武器まで出せんのかよ!」
「ご主人逃げましょう!」
「あぁ!……でもこれを何とかしないと」
黒刀は氷の壁を触り考えこむ。
「それなら任せてください!」
キュウビは自信満々な顔で手を腰にあて言ってくる。
おいおい大丈夫か…?
「………」
「む!まぁ見ててください」
「お、おう」
キュウビは手を前に出し集中し始めた。
「ご主人…下がってて下さい」
そう言うとキュウビの周りの氷が溶け始め炎がキュウビを囲っていく。
「キュウビ!?」
「フレイムクリムゾン!!」
キュウビの手に炎の刀らしき武器が握られており、その刀は激しく燃えている。
「はっ!せいやぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
キュウビは天高く飛び氷の壁を真っ二つに切り裂く。
「な…な…」
「さぁ行きましょご主人!」
「凄いな……お前…」
「当たり前です!私だってアヴァロン使いなんですよ!!」
「お〜!んじゃあ行こ……!?」
キュウビは何かに気づいたのか突然俺に向かって叫んでくる。
「危ない!!」
バキッン!!
レイの刃とキュウビの刃が激しくぶつかり、そのまま睨めあいをしている。
「おっしぃ〜」
「卑怯ですね、後ろから狙うなんて」
「そんなことない…よ!!!」
レイは衝突している刀を離し、そのまま一回展をして、その勢いでもう一度キュウビに叩きつける。
バゴンッ!!
「くっ!!!」
「ほらほらどうした!!」
キュウビの周りの土が円を描くようにへこみ始めた。
「ご、ご主人!今のうちに逃げてください!!」
「キュウビ…」
「ほら、早く!!」
「イヤだ」
「え…」
「お前をおいて逃げるなんて俺は絶対しない!」
「ご主人…」
「話てる余裕あるの!」
レイはさらに力をこめキュウビを押しつぶそうとしてくる。
「ぐっ!!うおおりゃああああ!!!」
周りの炎がキュウビに周りに集まり[フレイムクリムゾン]にまとっている炎がさらに激しく燃え始めレイを振り払った。
「はぁ…はぁ…」
レイは一回展し、見事に着地する。
「やるぇ」
「当然…です……」
キュウビは全身から汗がでてきて、とても苦しそうだ…
「無理すなよww訓練も何もしてない君がそんなに力を使ったら……君…死ぬよ」
「えっ……」
「はぁ…はぁ…それでも…それでも!私はご主人は守ります!!」
キュウビは黒刀の目の前に立ちレイに刀を突き刺す。
「お前…どうしてそこまで俺を…」
「……あはは、そんなの決まってるじゃないですか……」
「決まってるって…お前…」
「好きだからですよ…」
「え…」
「私…ご主人に助けてもらって…記憶もない私を家においてくれて…家族を知って……恋という感情を知りました……ご主人といると胸が暖かくなるんですよ」
キュウビは振り返り笑顔で言ってくれた。
でも…その笑顔には涙があった…
「だから…私はご主人を守り……ます!!」
最後の言葉をいうとレイに向かって刀を斬りつけるがレイは軽く避け右下から左上に刀を振り上げる。
「なっ!」
キュウビは顔スレスレで避けるが頬には斬られた傷がつけられてしまった。
「はぁ…もういいや、死んでよ…君」
レイはものすごい速さでキュウビに斬りつけキュウビは刀で受けるがレイは乱れ斬りをしているためキュウビの体は少しずつ斬りつけ始めていた。
「くっ…」
「ほらほらほらほら!!」

俺は…どうして何もできないんだ…どうして俺に力がないんだ…

「これでどうだ!!」
「うっ…きゃあああ!!!」
レイはキュウビの刀ごと壁に吹き飛ばした。
「キュウビ!!!!!」
「う…ご主人……逃げ……て…」
「ご主人ご主人うるさいなぁ……あ!いい事思いついた」
「君の大好きなご主人を殺したら君はどんな反応してくれるのかなぁ?」
「…!?やめて……やめて!!!」
「いいよ…かかってこい!!!!」
俺だって……俺だって!!あいつを一発殴るぐらいできるはずだ!
「ダメです!逃げて下さい!!」
「そうこなくっちゃ!」
レイは嬉しそうに手と手を合わせる。
「んじゃ行くよ!!」
「来い!!」
真っ直ぐレイの刃が俺に向かってくるが俺はそんなのお構いなしに突っ込みレイの刃を体ギリギリでかわし、その勢いで顔面に殴りくけるがかわされ思いっきり左足で腹を蹴られてしまう。
「ぐはっ!」
そのままレイは黒刀の髪を掴み上にあげ刀で斬りつけようとする。
「ご主人!!」
「これで終わりだ!!」
……くっ……負けるか……
「うおらぁ!!」
黒刀はレイが斬りつけた刃を手で掴み、その手からは血が滲み出ている。
「なっ…」
「あはは……捕まえたぞ…」
「くっ!離せ!!」
黒刀の髪を掴んでいた手を離し両手で刀を持ったその瞬間、黒刀は刀が手を離しそのままレイの顔面を殴った。
「オラァ!!!」
「ぐほあっ!」
レイは少し後ろに下がり顔を抑えている。
「ざまぁみろ!」
「こいつ…殺す!」
「う……ご主人…すごい…」
レイから今まで以上の殺気を出し黒刀を睨む。
「ご主人!逃げて!!」
「はぁ…はぁ…!?ぐはっ!!」
黒刀が手を抑えていると一瞬でレイが黒刀の目の前に来て、その勢いで腹を殴り飛ばす。
「遊びは終わりだ……」
ドゴンッ!!
黒刀は壁に激突し動けない状態になってしまった。
「く……そ……」
何とか立とうとするが黒刀の目の前にはレイの影がおおい、天高く刀を上げ今にも振り下ろそうとしている。
「死ね」
ズバッ
空中に血が飛び回り虚しく地面に落ちていく。


………嘘だろ…



黒刀の目の前にはレイの影ではなくキュウビの影でおおわれ、キュウビは血だらけで立っていた…
「ごしゅ…じん……」
そんな……嘘だろ…
キュウビは黒刀に倒れこみ目が虚ろになっていた。
「キュウビ!!!!!」
「あ〜あ…死んじゃった…」
「てめぇ!!!!!」
「はぁ…よけないこと…せっかくこいつを殺してあいつのの反応見たかったのに……残念だなぁ」
「ふざけんなよ……ふざけんな!!!」
「ご主人……」
「キュウビ!?」
「だい…じょうぶ……ですから…」
「もう喋んな……」
「もういいや…死んでよ…君も…そこにいる死に損ないもね」
「……くっ…クリムゾンフィード!!」
キュウビは最後の力を使い黒刀とキュウビの周りが激しく燃え上がりレイは外側に飛ばされた。
「ぐあっ!……まだこんな力が、まぁいい……あいつが力尽きるのも時間の問題か」

「キュウビ……お前…」
「ご主人…ゴボッ…はぁ…はぁ…」
キュウビは黒刀の腕と足に倒れこみ今にも……
「はぁ…一緒にプリクラ撮りたかったですね……」
「はぁ?何今頃言ってんだよ……行こうぜ!……だから…だから死ぬなよ!!」
キュウビの顔に黒刀の涙がポタポタと落ちていた……
「ごめんなさい……ご主人…」
「それは……ちょっと…無理な頼み事ですね………」
「なんでだよ!!なん……で!」
「この傷じゃ私は助かりません……でもご主人だけでも…逃げて下さい…」
「……っ!」
「馬鹿やろ……二度も言わせんな……お前をおいて逃げるわけないだろ……」
キュウビは黒刀の頬を触り「泣かないで下さいよ……」
黒刀はキュウビの手を掴み「なんだよ……お前も泣いてるじゃねぇか」
「もっと…ご主人と…居たかった…です…」
「なんで過去形なんだよ…お前がこんな所で死ぬような玉じゃないだろ……」
「…ふふ……でも……もうダメみたいです」
「好きですよ……ご主人…」
そう言うとキュウビはめいいっぱいの笑顔をした…
そして……黒刀が掴んでいたキュウビの手の力が完全になくなっていく…
「キュウ……ビ…?なぁ……嘘だろ……そんな…そんないい笑顔しといて死ぬなんてないよな……なぁ!!」
「なんとか言えよ!!!キュウビ!!!!」
黒刀はキュウビのおでこに自分のおでこを当て……優しい声で「俺も…好きだよ……キュウビ…」
そのまま黒刀はキュウビの唇にキスをした…



その瞬間、周りに激しく燃えていた炎が円を描くように天空に燃え上がり始めた。
「なんだ!?……何が起こっている!?」
新しい技か……いや、あいつにそんな力があるわけない……
「だったらこれは一体……」
渦巻いている炎の中央に誰かがいるのがわかった。
「くっ!誰だ!?……キュウビ?黒刀?どっちだ!?」
でもレイから見えていたのは一人の影だけだった……
「一人……てことは黒刀か」
燃え盛っている炎が弾けて天空に飛び回り、まるで赤い雪みたいにゆっくり地面に落ち始め炎の中にいた人が見えるようになる。
「お前……誰だ!?」
そこに居たのは赤い髪に狐耳があり、背中らへんには8尾の尻尾がはえていて、浴衣のような服装で両手には赤く燃えあがる刀が握られていた。

「は?」
「お前一体何処から俺の世界に入った!黒刀達は何処に行った!?」
「え?黒刀って…俺だけど……え!?」
「なん…だと…お前が黒刀!?」
そのキツネの少年は自分の体を見渡し驚いていた。
「おいおい……どうなってんだ…」
「(こんな事って…)」
「……!?今の声キュウビか!?」
「(は、はい!……まさかご主人がレグルスだったとは……運命を感じます…)」
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