リセット
一章 市ヶ谷について

1

5月8日 月曜日


間幌高等学校は、最寄り駅から坂道を5分も歩けば着く。


俺はこの坂道が嫌いだ。



2年になってようやく、謹慎が解けた。
4月のはじめのことだ。


今日が俺の、2年次初登校になるんだけど。
4月中はややこしい事情があって、学校に行く状態じゃなかった。


「イチガヤ」


背後から友人の声。
早川智だ。
昨年同じクラスのよしみで仲良くなった。よくしゃべり、少年っ気のなくならないやつだ。俺もそうだが、部活動には所属しておらず、放課後の暇つぶしに出かけることも時々あった。


「サトル」

「解謹おめでと。今登校?遅刻だぞ」

「まぁね。母親がまたヒスって」

「あー、お前んとこなー。」



母は、病気を患っている。社会に受け要られ難い病気だ。


まぁ、それは後ほど話すよ。
ちょっとややこしいんだ。


結果だけ言うと、その病気のせいで母は情緒不安定気味だ。
それは、昔からだけど。



「また人身事故。だから遅刻」



話すことがなくなったのか、聞いてもいないのに智は話し出した。マイペースなやつなんだ。
学校まで数メートル。


「別に死ぬのは勝手だし、おかげでホサの授業遅刻できるしいいんだけど」


校門のゲートをよじ登りながら智は言う。
鞄を彼にあずけて自分も登る。


この時間になるとゲートは閉まって鍵がかかってしまう。ありがたいことにゲートを管理する親父さんは散歩中だ。

誰も遅刻するやつなんか気にしないってことか。



「自殺、電車に頼らんで欲しいわ〜」

「俺は無害だけどね。どんまい」

「いや実質俺も無害だって」



智は笑いながら言った。俺も微笑み返す。


親しき友人へのソシアルだ。


空は明るい水色だ。太陽は反対側を向いている。


それでも眩しかった。
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